半翅目(Hemiptera) タマワタムシ科(Pemphigidae)

[形態]
 同一種でも世代によって形態がいちじるしく異なる。触角の鞭状部は短く、角状管は小孔であるか、まっかく退化する。多くの場合ろう物質にで覆われ、ろう腺板が発達している。
 幹母(第1世代)は無翅で、成虫の触角や脚は短い。虫えいを形成する1齢幼虫は活動的で、多くの場合2齢以後と形態が異なっている。
 有翅産性虫から生まれる両性世代の雌雄は矮小で、1齢のときから口器を欠き、まったく摂食しない。雌の産む卵(まれに幹母を胎生)は1個のみである。両性世代のこの特徴はタマワタムシ科のすべての種に共通で、有翅の産性虫か通常の有翅の胎生虫かは、その有翅虫が産んだ幼虫の口器を調べると解る。

[生態]
 タマワタムシ科の種はほとんどが寄主転換をおこない、まったく異なった2種類の植物に寄生する。両性生殖がおこなわれる木本の植物を1次寄主植物、そうでない草本の植物を2次寄主植物という。1次寄主植物の樹皮の裂目や樹皮の下に生みつけられた受精卵(越冬卵)が孵化した幹母の1齢幼虫は、種によって決まった寄生部位に移動して虫えいを形成する。虫えい内で幹母は成虫となり、単性生殖によって多数の第2世代を産仔する。第2世代は成長すると有翅胎生虫になることが多い。閉鎖型の虫えいでは、有翅胎生虫が出現する頃には裂開し、2次寄主植物へ移住する。種によっては第2世代の一部または全部が無翅胎生虫になり、有翅胎生虫の出現は第3世代以後となる。
 2次寄主へ移住した有翅胎生虫は幼虫を産仔して、コロニーが形成される。成長した幼虫は無翅胎生虫となって世代を繰り返し、秋に一部の幼虫が有翅産性虫になる。有翅産性虫は1次寄主に戻って両性世代の雌雄を産み、その雌雄が交尾して受精卵を産みつける。

[虫えいの形状]
 1次寄主植物で虫えいを形成するのは、幹母1齢幼虫であることがほどんどで、次の代表的な虫えい形成の過程がある。

(1) 葉裏から吸汁して葉表に突出した虫えいを形成するもの。
(2) 葉柄や若枝で吸汁し、虫体直下の組織を陥没させ、同時に周囲の組織を隆起させて、その中に包み困れてしまうもの。
(3) 若枝で吸汁し、そこから数センチ離れた葉を遠隔操作によって巻くもの。
 虫えいは開放型と閉鎖型に大別できる。開放型虫えいは単純なものから閉鎖型に近いものまであるが、捕食者に侵入されやすいが、脱皮殻や甘露などの排泄物を外に捨てることや、成長した有翅胎生虫が開口部から常時脱出できるので、繁殖を長期間にわたって繰り返すことができるなどの利点がある。閉鎖型虫えいは捕食者に侵入されにくいが、空間が限られるため虫えい内の虫数は少ない。
 2次寄主植物で虫えいを形成するものはわずかで、形状も単純である。