半翅目(Hemiptera) アブラムシ科(Aphididae)

[形態]
 アブラムシは体長が1〜6mmの小形昆虫で、アブラムシ亜科、マダラアブラムシ亜科、タマワタムシ亜科、ケブカアブラムシ亜科、ヒラタアブラムシ亜科、オオアブラムシ亜科、ハトジワタムシ亜科の7亜科に分類することができが、ここではタマワタムシ類を独立したタマワタムシ科として扱った。触角の長さや翅脈、角状管の大きさや形、白色の綿毛状ろう物質の有無など、形態的に多様である。

[生態]
 単性生殖で胎生するものと、両性生殖によって受精卵を産むものがあり、無翅胎生虫と有翅胎生虫、両性世代の雌雄など、いくつかの生活多型が出現する。アブラムシは寄主のさまざまな部位に寄生して汁液を吸収するが、1種の植物に寄生する単食性の種の他、複数の植物に寄生する多食性のものも多い。中には100種以上の植物に寄生する種もある。
 生活史ははなはだ多様で、寄主を転換しない非移住型の種と、寄主を転換する移住型の種がある。移住型では卵を産みつける植物を1次寄主植物(卵で越冬することが多いので冬寄主植物)といい、このときに孵化した幹母が虫えいを作る。幹母が胎生した幼虫が成長して有翅胎生虫となり、他の植物に移住して単性生殖で胎生をするとき、これらの植物を2次寄主植物(夏を過ごすので夏寄主植物)という。1次寄主は木本性で、2次寄主は草本性であることが多い。

[虫えいの形状]
 アブラムシの寄生を受けた植物は、生理的のみならず形態的にも変化し、葉が巻縮したり、袋状の虫えいが形成される。巻縮葉の表皮細胞や葉肉細胞はともに肥大し、さらに海綿状組織の細胞も大きくなり、正常な葉の約2倍に肥厚するが、細胞の数は増加しない。
 袋状の虫えいを形成する植物も多く、アブラムシの種によって特異な形状の虫えいが形成される。幹母1齢幼虫が幼葉または若葉の表面に寄生して、汁液を吸収しはじめると間もなく、周辺の葉組織では急激な細胞分裂がおこり、幹母が吸汁している葉面の一部が陥入し、反対側へ袋状に少しずつ盛り上がる。細胞の増殖とともに細胞の容積も増大し、海綿状組織よりも棚状組織の細胞の肥大がいちじるしい。虫えいの形成には、アブラムシの吸汁による連続的な刺激が必要で、死んだり脱出して吸汁による刺激がなくなると、虫えいの肥大は中止される。虫えいの肥大生長は、多くの種では幹母の1齢幼虫期にほとんど完成される。